震災支援を経て、阿蘇へ移住。心を惹きつけたもの、その先にある思いとは。

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震災支援を経て、阿蘇へ移住。心を惹きつけたもの、その先にある思いとは。

2017.06.16

阿蘇神社(阿蘇市一の宮町)から歩いて3分ほどの少し奥まった場所に、女学校跡を改装したカフェや寒ざらしなどのお店が並ぶエリアがある。敷地の中を湧水が流れ、みずみずしい空気が漂うこの場所は、知る人ぞ知る穴場の観光スポットである。
昨年11月、この場所に「雲海珈琲焙煎所」という名の小さなカフェが誕生した。自家焙煎のスペシャルティコーヒーが味わえるスポットだ。

阿蘇神社近くにある「雲海珈琲焙煎所」

代表を務める木村智史さんと所長の菊地昭一さんは、東京から阿蘇へ移住し、この店をスタートした。
そのきっかけとなったのが、昨年の熊本地震。木村さんは、震災の10日後に益城町に入り、そこから約4か月間、日本財団と一緒に震災復興支援に関わっていた。「あの頃は、毎日必死でしたね。熊本地震では、避難所に行かず、車中泊や自宅の庭などに避難をされている在宅避難の方も多くいらっしゃいましたから。行政が避難者の実態をつかみにくかったんです。そこで我々は、益城町の家を一軒ずつ回りながら実態を調査し、そこで浮かび上がってくる問題を解決していく。そういった毎日でした」。

代表・木村智史さん(写真右)、所長・菊地昭一さん

東北の震災でもボランティア経験のあった木村さんは、その経験を生かし、熊本の被災者の心に寄り添いながら活動をおこなっていたそうだ。その後、4か月間の任期を終え、東京へ戻ろうかというとき、1日だけ時間があり、阿蘇に住む友人を訪ねる。そして、連れてこられたのが、この場所だったという。「ひと目で気に入りました」と木村さん。

昔なつかしいレトロな雰囲気が漂う店内

「神社が近くにあって、水が湧いてて、空気もおいしい」と、ひとめぼれ。聞けば東京に比べて家賃も安いし、この場所で何かをはじめたいという気持ちに自然となったそうだ。東京へ戻り、友人の菊地さんへ相談。10月には菊地さんも阿蘇を訪れ、11月には二人でお店をオープンするという急ピッチで店づくりが進んでいった。

この店は、なにかお店をはじめたいと思っている人にも参考になると思うんですね。それぐらい、少ない負担ではじめました。まだ試行錯誤の部分もあるし、これからどんどん進化していくお店です」と話す木村さんの表情には笑顔がこぼれ、とても楽しげだ。

店に一歩入ると、コーヒーの香ばしい香りに包まれる

熊本へ移住することにためらいはなかったのだろうか。「熊本って、ただの田舎じゃない気がします。阿蘇は自然が豊かだし、熊本市内の上通りや下通りへ行けば、都会的な感じもするし、いろいろな色を持った街。それに、熊本に来て出会った人達がいい人ばかりだったから」。阿蘇での暮らしは、とにかく気持ちがいいそうだ。

「冬場の寒さには驚きましたが、阿蘇はとにかく気持ちがいい場所」と話す木村さん

店では、所長の菊地さんがこだわってブレンドしたコーヒー豆を、小さな焙煎機で焙煎。それを阿蘇の湧水をつかって、一杯ずつていねいにドリップしてくれる。ひと口飲んで、身体にすーっと溶けこむすっきりとした味わい。

写真右側の手回しの焙煎機をつかって、コツコツ焙煎するそうだ

所長であり、コーヒー担当の菊地さんいわく、「もともとコーヒーが苦手だったんです。だけど、エチオピアの浅煎りコーヒーに出合って、なんだか目覚めてしまって。だからこの店でも浅煎りのブレンドにこだわっています。今のところ県外からいらっしゃるお客様が多いですが、地元の方にも気軽に楽しんでいただきたいですね!」。 阿蘇の湧水でいれたスペシャルティコーヒーが1杯400円から。価格も良心的だ。

「毎月あたらしいブレンドコーヒーを提供していきたいです」と菊地さん

原料にもこだわった「ASOジンジャーエール」。阿蘇神社の復興をねがって作られたもの

コーヒー以外にも阿蘇神社を応援したいとの思いで熊本県産の原料にこだわって作った「ASOジンジャーエール」のほか、地元の陶芸家とコラボしたオリジナルのカップやオリジナルタオルなど、二人の思いが次々と形になっている「雲海珈琲焙煎所」
熊本地震をきっかけに阿蘇へ移り住んだ木村さんと、菊地さんのひとつの挑戦は、復興へ向かう地元の人にとっても、癒やしの場所となり、夢を与えてくれる場所になるはずだ。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

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